続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

茶の本 岡倉覚三

 岡倉覚三とは岡倉天心の本名である。著者が日本の心を海外へ伝えようと認めた一冊。原本は英語だが日本語に翻訳されての刊行である。

 なるほどこの本には日本人の美学が凝集されている。それは大陸から渡来した儒教・仏教の教えと日本固有の文化が融合した独自の美意識であり、この辺鄙な島国で育まれてきた思想である。その体現者は千利休であり、利休七哲と数えられた弟子たちである。

 本書が書かれた時代、日本は西洋文化に呑み込まれつつあった。今やすっかり西洋文明に飲み込まれ、日本は跡形もないが、こういった変遷期には抗うものが出るものだ。そして、それは非王に貴重な存在である。その貴重な一端を岡倉天心という傑物が担ったことに感動を覚えるとともに、天心が守ろうとしたものに心はせてほしい。今や失われたものが、当時は残っていたのだ。

 本当の意味での多様性とはなんだろう。そんなことを考えさせられる一冊であった。