続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

手紙のなかの日本人 半藤一利

 

 

 歴史探偵・半藤一利が歴史のなかの人々の遺した手紙から、その人となりを読み解く一冊。

 

 なるほど、これは大変面白い試みだと感じた。手紙というのは基本的にプライベートなものであり、それを通して歴史上の人に触れることは、その人物に親近感とリアリティを感じることができる。教科書に載っているあの人も、間違いなくこの世界に生きていたことが肌でわかる。

 

 個人的には、率直にあるがままに生きた良寛禅師のさっぱりとした人生に憧れたり、小林一茶のまったく知らなかった一面に驚いたりした。人を知るというのは教科書の年表で名前を確認することではないのだ。

 

 残念だったのは、ぼくの能力がない故に、引用してある手紙が、古い時代のものだとうまく読めないし、読めても意味があんまり理解できない。著者が現代語訳を添えてくれている場合も多いが、それはそれで微妙な言葉の機微みたいなものがうまく拾いきれない。歴史の知識が乏しいこともあって、どうにも歴史探偵の解説がもうひとつ理解しきれない印象であった。・・・つまりまだぼくが読むには早い本だったのかもしれない。

 

 ところで、表紙などに非常にシンプルな線画で人物のイラストが載っている。これがなんだかともても良い。素朴でやわらかい感じで「歴史上の人物」というものから堅苦しさをとっぱらってくれる。内容とよくマッチした挿絵で、とてもいい雰囲気で読書することができた。