続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

ぐるりのこと 梨木香歩

 

 

 「西の魔女が死んだ」で鮮烈なデビューを果たした著者のエッセイ。自身の身辺の観察から派生して、深い考察が世界のあり方にまで触れていく。

 

 申し訳ない。ぼくはこの本を語る資格はない。どうにも著者の言葉はぼくの体の表面で滑って流れてしまい、深い理解をすることができなかった。原因はきっと著者のぼくのバックグラウンドがあまりにも違うからだろう。ぼくには、著者と同じ視点に立つことがどうにもできないのだ(著者はイギリスで生活し、また歴史や文学史への造詣が深い・・・がぼくにはそれが全く欠けている)。

 

 とはいえ、「西の魔女が死んだ」に通づる、なにかこう「人の在り方」を問いかけてくるような文章は健在だ。著者の文章には人が生きるということの根本を再確認するような趣がある。そして、それは現代を生きる我々からすると、供給してもらわなければ困る物なのだ。

 

 また、読書家である著者はさまざまな文献を引用して論述を続けてくれる。不思議なことに、ぼくにはこの引用箇所が響いた。原文の引用を読むと、どうにもその本が読みたくなる。そんな気持ちがする。これはつまり、それだけ著者がクリティカルな引用をしているということだろう。ものの本質を貫いているのだ。しかし、本質だけで物事は理解できない。ぼくにはこの引用文献たちを通読する必要がある。なんとも、因果な本を読んでしまったものだ・・・と苦笑いしている。