続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

サマータイム 佐藤 多佳子

 

 

 少年少女を中心とする群像劇。ピアノの話とか、恋愛の話とかをとりとめもなくしていく。

 

 個人的には苦手な一冊。理由は恋愛が物語の軸となっているためである。まぁ、これは個人の受け取り方の問題である。ぼくには合わない。

 

 恋愛感情はほとんど狂気なので、あたりまえではあるのだが登場人物は支離滅裂な行動をとるのみである。果たしてこの小説に理性的な人間はいるのだろうかと思うぐらい。とはいいえ、自分が少年少女のときに理霊的な人間だったかと言われれば否である。つまり、この一冊にはリアリティのあるある少年少女が描かれているのかもしれない。ぼくは歳をとっていろんな経験をしてしまったので、むしろこの小説に出てくる登場人物をすごく気持ち悪い存在としてしか感じることはできない。理性の光・・・とでもいうべきものが彼らにはないように思われる。とはいえ、世間の評判を踏まえれば、たぶんぼくのほうが異端なのであろう。

 

 どうにも、恋愛というものは苦手である。たぶんロジックではないからだろう。ぼくには受け付けないが、そういう思考に価値があることはよくわかる。これからの時代に必要な思考かとも思う。ただし、とても危うい。この本に心震わせる人たちが健やかな心の持ち主であることを祈っている。