第二次世界大戦。大日本帝国は大東亜戦争を展開するも、結果は散々たるものに終わる。なぜこの国は失敗したのか?本書はその論理を詳らかとし、失敗から組織論について学ぶことを目的とする一冊である。
「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負け無し」という。敗北とは学ぶ機会である。学ばざるものはそこで停滞する。戦争というものは、国の特性が強く現れるもののようだ。少なくとも、第一次・第二次世界対戦は参戦した国々の思想・文化・人材・資源・技術etc...ありとあらゆるものが帝国主義のものとにぶつかりあったものだ。そこから学ぶということは、この国を学ぶということに限りなく近い。
著者らの結論はシンプルだ。旧日本軍は組織として弱かった。特に環境変化に順応する自己革新能力が無かった。つまり、「凝り固まった組織」だったので負けたのだ。逆説的に、著者らは旧日本軍を「環境に適応しすぎた組織」とも評している。ある特定の環境に適応しきってしまったため、外部環境の変化に対して手も足もでなかったのだ。そして、その要因は非常に複合的だが、ざっくり言えば「日本人らしさ」が組織の歯車を止めてしまっていたといえるようにぼくは感じた。
1984年に刊行された本なので、本書のなかの現代への言及はぼくらから見るとずいぶんと過去であるが、それでもまさに「今」の日本社会に通じるところがある。それは日本人あるいは日本社会が本質的に持つ問題点が今もわれわれの中に内在しているからではないだろうか。かつて軍隊のなかで生じた「組織の硬化」が、今は政府や企業の組織内に場所と形を変えて連綿と受け継がれているように思えてならない。
我々は失敗から学ぶべきだ。日本人という主体だからこそ、日本人を客観的にみる努力をしなければ、自分の姿がみえてこない。アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、ブラジル、オーストラリア・・・海外の国を語るように日本のことを語る努力が必要だ。少なくとも、この本はかつて日本人のなかに大きな欠陥があったことを知らしめてくれる。そういう一冊だった。