続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

坂の上の雲 二 司馬遼太郎

 

坂の上の雲(二) (文春文庫)

坂の上の雲(二) (文春文庫)

 

 

 明治時代。日本は近代化を推し進め世界の列強のなかにしがみつこうと必死だった。帝国主義が吹き荒れる世界。欧米の国々は植民地を広げていく。強大な清。南下を狙うロシア。時代のうねりの中で日本は日清戦争へ進んでいく。

 

 なぜか間違えて2巻を買ってしまった。しかし、歴史の物語はどこから始めても楽しめるようだ。本作では海軍少佐・秋山好古歌人正岡子規の2人を中心にすることで、世界の中の日本と当時の日本の世情が描かれる。

 

 僕自身はどうも昔から歴史は苦手なのだが、司馬遼太郎の本は楽しんで読める。これは歴史を物語として捉えることができるからだろう。登場人物も生き生きと感じられる。学校のお勉強では感じることができなかった「歴史」を感じることができるのが司馬遼太郎の物語の良さなのだ。

 

 さてこの2巻では日清戦争あたりから物語が進む。世界の列強が虎視眈々と領土を狙い、利権を獲得しようとしている。日本も呑気にはしていられない。軍備を増強して自身を守らなくてはならない。いや、資源に乏しい日本はむしろ領土を獲得しなくては身を守ることもできない。またそれぞれの国がそれぞれの事情を抱えている。各国の事情がわかると世界の動きがよくわかる。「国」というものが動くということが感じられる。

 

 一方で正岡子規を中心に、日本国内の民草が描かれる。戦争をしていようがなんだろうが、人々はその国の中でごく個人的に生きている。正直、正岡子規が何をした人なのかも全然知らなかった。非常に熱い魂の持ち主だったんだとびっくりした。

 

 そして、戦争というマクロな視点と、正岡子規という一個人の生活が対比的に描かれることで「時代」をより深く理解することができる。この仕掛を発想する人はきっと多いのだろうが、これを形にするのはものすごい労力がいるのだろう。司馬遼太郎の力を感じられる一冊だった。