続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

忘れられた日本人 宮本常一

 

忘れられた日本人 (岩波文庫)

忘れられた日本人 (岩波文庫)

 

 

長い鎖国が終わり日本は明治時代に突入した。文明開化を合言葉に流れ込む海外の、特に西洋の文化。その影で日本人の紡ぎあげてきた文化は忘れられていった。著者は日本全国を歩き回りそんな忘れられた日本人の姿を蒐集してきた。この本はそんな蒐集の一部である。

 

この本には日本という国の根幹にあった農民達の姿が描かれている。村のものごとを相談し取り決める寄り合い健やかさ。田植えの合間にエロ談義で盛り上がる女達の爽やかさと逞しさ。村から外れたものにそれでもなお生きていくことを許す社会の優しさ、柔軟さ。

 

日本人は進歩した西洋文化に飛びついた。自分たちの足もとにあったものを捨ててしまった。この本にはそういう失われた日本人の足もとが記録されているのかもしれない。