続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

日本国紀 百田尚樹

 

日本国紀

日本国紀

  • 作者:百田 尚樹
  • 発売日: 2018/11/12
  • メディア: 単行本
 

  一時、物議を醸した百田尚樹の本。日本という国の成り立ちから平成の時代まで、その歴史を作者の視点で論じる。

 

 ぼくは歴史に疎いので、この本の内容や見識が正確なのかは正直よくわからない。読後の印象としては「歴史好きの親戚のおっちゃんの日本歴史論」という感じである。どこまでが本当かわからないが、ある程度本当のような気もする。まぁ、こんな歴史の見方もある、という感じであろうか。

 

 なんとなく感じるのは著者の「現代の日本の国の在り方対する危機感」である。それは憲法9条であったり、愛国心であったり、危機意識など様々だ。歴史を論じるのは、それらの問題提起のための引き合いという要素が強いように思う。例えば、かつての外国からの侵略に対して国を守った武士の愛国心や能力の高さを説き、中国・朝鮮の行為に対して日本の正当性を説くなど。

 

 別にこの本を称賛するつもりはないが、ただ、賛同するところがあるとすれば「日本の国に充満する自虐意識への危機感」だろうか。仕事をしていると時々感じるが、この国の中には「自分で考えたり発想したことはダメだ」という雰囲気があるように思う。アメリカやヨーロッパで成功し、前例のあるものしか認めない。しかも、その流用した考え方が日本の風土や文化に適しているかは考えていない。むしろ、流用した考え方に風土や文化を改造していく。その結果、あちこちから流用したものや考えが氾濫し、つぎはぎだらけの訳のわからないものが生み出されていく。

 

 たまには日本発でやってみてもいいじゃないか、と思う。「失敗したら責任が取れない」という雰囲気もあるが、失敗は成功の母ともいうし、世の中に失敗せず何かを成功した人はたぶんいないだろう。この国を包む抑制的は雰囲気がどこからくるのかずっと謎だったが、もしかしたらぼくらは不必要なまでに自虐意識をもった国民になっているのかもしれない。

 

 いろんな歴史の見方を感じてみたい人におすすめの本。ただ、一歩引いて読まなくてはならない。この本に熱中するような読み方はバランス感覚を欠いて大変危険だと思う。