続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

大学とは何か 吉見俊哉

 

 

 だから大学が、単に国家のものでも、国民のものでも、産業界のものでも、教師たちのものでも、さらには学生たちのものではないとするならば、大学はいったい誰のものなのか。

 

 大学とは何か。その問の答えを大学誕生の歴史から紐解き、日本と世界を取り巻く環境の大きの変化の中で、変わらざるをえない現代の大学と、その目指す姿を論考する一冊。

 

 日本の大学は欧米の大学とは随分違う。教育や研究に対する姿勢も、学生の質も異なる。そして、日本社会全体が明治の文明開化以来、西洋文明の後を追い続けていることもあり、日本の大学は欧米の大学のあとを一生懸命追っかけている。この本を読めば実にクリアだが、日本の大学はそもそもの成り立ちが欧米の大学とは成り立ちも置かれている環境も全く違うことに気付かされる。それにも関わらず、日本の大学は欧米のあとを追う。果たしてその意味はあるのだろうか。

 

 なんにせよ大学という組織は、現在大きなうねりの中にある。だからこそ、大学という存在の意味を、価値を再考し、いまこそ地に足つけて屹立していかねばならないのではないか。ぼくには 著者がそう問いかけてくるように感じた。

 

 大学の先生を含め、教育・研究に携わる人々に読んで欲しい一冊。