続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

アトムの命題 大塚英志

 

 漫画の神様・手塚治虫。その代表作の1つ鉄腕アトムが、いかなる経緯で生まれてきたのかを解き明かす一冊。そして、鉄腕アトムの裏に隠された、マンガ界に大きな潮流を生み出した命題へと至る。

 

 マンガというものを時代や自分と結びつけて解き明かす。それはさながら小説家の全集を読んで、紐解いていくような作業だ。こういった読み方がマンガにも適応できるということに驚いた。どうにもぼくのなかでは「マンガは子供向けのもの」という意識がある(実際には子供向けでないマンガが多数あることはよくわかっているが)。いあまやオタクもファッションの1つになったが、黎明期のオタクとはこういうものなのかもしれない。

 

 手塚作品を中心に解説しながら、あしたのジョー巨人の星ポーの一族など、手塚のあとに続くマンガに触れていくのも面白かった。なるほど、マンガ家どうしも(当たり前だが)お互いに影響を与え合うものである。意識的にしろ、無意識の産物であったとしても、マンガにも歴史があるのだ。

 

 「マンガ」というものに新しい目線を与えてくれる一冊。