続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

聖書物語 木崎さと子

 

聖書物語 (角川ソフィア文庫)

聖書物語 (角川ソフィア文庫)

 

 

ユダヤ教キリスト教聖典である聖書。それはイスラエルの民族の歴史を描く大きな物語でもある。その要点を引用し、おおまかな物語の流れを追う一冊。平易な言葉でわかりやすく、主教や聖典というものに意識の乏しいぼくのような日本人でも読みやすい。

 

ユダヤ教キリスト教の背景にある物語をわかりやすく大雑把に学べる一冊。いきなり聖書を読むわけにはいかないが、この本ならなんとなく聞いたことのある名前を、ちゃんと物語上の一人物として理解することができる。例えばモーゼとか、アリマタヤのヨセフとか、ネブカドネツァルとか。聖書を全部読むなんて出来ないが、これならサクサク読める。広く浅い入門書として最適だ。

 

細かいことをいえばいろいろあるが、個人的には旧約聖書ユダヤ教)におけるイスラエルの神と新約聖書キリスト教)の父なる神の違いが物語を通して感じ取れたのがよかった。イスラエルの神は未熟な民を厳しく導く。時に理不尽ともいえる荒々しい言動は、古代の人々には全く太刀打ちできなかった大自然の力そのものを象徴しているのだろう。そしてその大自然の理不尽さを、絶望ではなく神の試練として民族への叱咤激励に転換することこそ、旧約聖書の役割であったのではないだろうか。一方で、時代が下り父なる神としてキリストの時代に君臨した神は幾分優しい。まさに親の面持ちでイエス・キリストとその民を見守る。モチーフが鳩ということもあってずいぶん可愛らしい(イスラエルの神は稲妻がモチーフである)。

 

この神の違いだけでもユダヤ教のストイックさと向上精神が理解できるし、キリスト教が1つの父に統一されることで大きな力を発揮する宗教であることがわかる。宗教は人の生き方に大きな影響を与えている。人を理解するために、宗教は欠かせない。