続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

戦う操縦士 サン・テグジュペリ

 

 何をするべきか?答えは無数にある。これを。あれを。あるいは別のことを。未来はあらかじめ決められてなどいないのだ。いかにあるべきか?これこそが重要な問題なのだ(私)

 

 第二次世界大戦。フランスはドイツの侵略に抗うことはできず、前線は後退の一途をたどっていた。「私」はフランス軍2/33飛行部隊のパイロット。偵察飛行任務を帯びて前線へ向かうなかで、私は眼下に戦災から避難する悲しい人々を目撃する。

 

 サン・テグジュペリは、冷ややかな眼差しで人間の愛情を見つめ続けた人であるように思う。本作は著者の体験そのままを描いた作品として、非常にリアリティのある一作である。個人的にはサン・テグジュペリ作品のなかでは一番に推したい。

 

 過酷な任務のなかで、私が思い至るのは「人間」のあり方だった。それは1個人や人間の総体ではなく、大きな集団としての「人間」であり、個人はどの「人間」に属し、如何に結びつけられ、如何にその集団働にきかけるのか。それが、失われてしまった個人の生きる道ではないかとサン・テグジュペリは語りかける。

 

 この本が書かれた時代からもう50年以上にもなる。社会も人々も大きく変化している。自分はどんな「人間」なのか。見直すこともときには必要なのかもしれない。