続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

人間の建設 小林秀雄・岡潔

 

 昭和40年に日本の知の巨人2人が行った対談をまとめたもの。

 

 わずか150ページほどの本の中で、じつに様々なテーマを取りあつかっている。学問のあり方、芸術論、ゴッホ、酒、本居宣長、関数学、批評論などなど自由に話が展開される。それでいて、両者共に1つ1つの発言におそるべき鋭さが込められている。なんだか、侍の真剣勝負に立ち会っているような、そんな緊張感を感じる一冊だった。

 

 個人的には学問に対する姿勢を論じたあたりが印象に残った。主に岡さんの発言になるが、小我を超越した学問への向き合い方、無明を認識すること、学問を楽しむ心、それらを育てるための工夫、日本の現状(昭和40年の)。

 

 現在にも通じる示唆が盛り込まれた一冊だと思う。逆に言えば、日本人は昭和40年の最先端をいく人間の意識からすれば未だ同じところにいるのかもしれない。多くの日本人に読んでもらいたい一冊。