続: ぼくの一時保存

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禅マインド ビギナーズ・マインド 鈴木俊隆 訳:松永太郎

 

禅マインド ビギナーズ・マインド (サンガ新書)

禅マインド ビギナーズ・マインド (サンガ新書)

  • 作者:鈴木俊隆
  • 発売日: 2012/06/20
  • メディア: 新書
 

 

 著者は曹洞宗の僧侶。なんと1950年代にアメリカへわたり布教活動をして、アメリカに禅宗を根付かせたという。その鈴木老師が修行のなかで弟子に語った言葉を整理した本である。

 

 個人的には大変楽しめた。禅というものは全く知らないが、この本を読むうちにぼくもなにか禅を学んでみたいという気持ちになった。

 

 一応、禅宗は仏教の一形態であるようだが、老師の言葉に宗教くささはあまり無い。老師の言葉からは、生き方や心の在り方、現実への認識を研鑽することが禅の目的であるように思われる。とはいえ老師の言葉にはよくわからないものが多い。そもそも禅には不立文字という考え方がある。文字や言葉の外にこそ禅の真髄があるという考え方だ。文字や言葉では表わせないものを本で伝えようというのだからわからないのも当然かもしれないが。

 

 この本の良いところは伝えることに特化した研ぎ澄まされた言葉で構成されていることだろう。この本が生まれるまでには多くの壁があったと思われる。まず、日本人である鈴木老師がアメリカで語るために日本語で形作られた禅の思想を翻訳した。そして文化の異なるアメリカでそれを伝えたのだ。伝導のために幾度となく語られるなかで老師の言葉は洗練されたのだろう。さらにこの本は英語から日本語へ翻訳されることになる。こういう過程のなかで、結果としてこの本には禅のエッセンスのとでもいうものが凝集されているのではないだろうか。

 

 一章ずつは非常に短く読みやすい。それでいて味わい深い。タイトルに偽りなし、という一冊だった。