続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

ドーン 平野啓一郎

 

ドーン (講談社文庫)

ドーン (講談社文庫)

 

 

 近未来。AIを駆使した監視カメラネットワーク「散影」が国家を覆い、一方で個人のなかの異なる個性「分人(デイヴイジユアル:dividual)」が思想として定着した時代。宇宙飛行士「明日人」は世界初の火星有人飛行の乗組員となる。極限状態ですり減るパイロット達の精神。スキャンダルはアメリカ大統領選挙にも波紋を及ぼす。人類はどこへ向かっているのか。

 

 申し訳ないがぼくはこの本を全文ちゃんと読んではいない。レビューをする資格はないのだが、このブロクはぼくのメモなので許して欲しい。一応、ぼくの中でこの本は終わったのでメモを残す。以降は200ページほどちゃんと読んで、あとは斜め読みしたいい加減な感想である。

 

 最初にこの本に興味を持ったのは「分人」という概念の面白さをどこかで芸能人が語っていたからだ。で、この本を買ってみた。人間は環境や相手によって様々な姿を見せる。それを個人のなかに存在する多様な個性とし、分人と作者は定義したわけだ。なるほど、それは面白いと思う。分人という言葉や英語のdeovodualという表現も適切でいいと思う・・・のだが、この概念は別段新しいわけでもない。虎の威を借る狐、猫なで声、長いものには巻かれろ、と古い言葉も数々ある。人は状況によって自分の態度を変えるのだ。自分自身をさらけ出して生きている人間はほとんどいないだろう。少なくとも日本という国の中には。

 

 そのあとは特に興味の湧く要素がなかった。宇宙空間という極限状態のなか、パイロット達にかかる精神負荷。裏世界で暗躍するテロリスト。マラリア原虫を改良した生物兵器。極限ゆえの人間の愛。愛ゆえの過ち。

 

 硬派なSFでしっかり地に足がついている。一方でジャンプ力が足りない。ロッククライミングにチャレンジして、地面から足が30 cmしか浮いていない感じ。ストーリー上の様々な要素はみんなどこかで観たような気がする。それは小説であり、映画であり、テレビゲームであり、媒体は様々なのだと思うがどこか誰かが考えたものの寄せ集めのように思われる。またそれが、それとなく序盤で分かってしまうのだ。

 

 というわけで、ある程度年を経た人には楽しめない作品なのだろう。逆に、いろんなSFのおもしろ要素をかき集めた作品ではあると思うので、まっさらな状態で読む人には楽しめるかもしれない。小学生〜中学生ぐらいならおもいしろいんじゃないだろうか。