続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

本を読む本 MJアドラー、CVドーレン著 外山滋比古、槇未知子訳

 

これは「本を読む人」のための本である(第一章冒頭)

 

 1940年代にアメリカで刊行された一冊。世界中で翻訳され読みつがれているこの本は、ぼくが敬愛する外山滋比古らによって訳され日本語でも読むことができる。「読書」という行為を4段階のレベルに分け、わかりやすく、そして鮮烈にその意義を説く。

 

 たぶん、本を読むという能力はこれからも重要なものであり続けると思う。世の中の最新情報は、文字で届くことが多い。インターネットが普及し、回線の高速化が進んだ現代でさえ、情報の多くは文字の形で流れている。もちろん動画や音声も随分普及したし、VRなんかも最近では活躍しているが、やはり情報の第一線は文字が支えている。本書で語られる読書技術は何も本を読むためだけのものではない。文字を介して得られる情報を、広く、深く探るには「読書技術」が必要なのだ。

 

 とはいえ、個人的にはこの本に書いてあることは、多くの人が無意識に行っていることだと思う。しかし、当たり前過ぎてわれわれはそこに「技術」が存在することに気がついていない。この本はその技術を言葉によって分解し、ぼくらがあいまいに捉えてきた「読書」というものにクリアな輪郭を与えてくれる。簡単にいえば「読書技術の存在」に気づかせてくれることこそがこの本の1つの価値だろう。技術は意識的に使ってこそ価値を発揮する。その意味で、すべての人々にこの本をおすすめしたい。

 

 個人的には高校生ぐらい読んでおけばよかった。その後の人生で出会った本とのあり方が全く違ったかもしれない。それぐらい有意義な一冊だと思う。本棚にずっと残して、繰り返し読みたい。