続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

ひとはなぜ戦争をするのか  アルバート・アインシュタイン、ジークムント・フロイト

 1932年、国際連盟は物理学者・アインシュタインに依頼した。「この文明において最も重要な問題について、最も意見交換したい人と書簡を交わしてください」と。テーマは「戦争」に決まった。相手は心理学者・フロイト。20世紀最大の頭脳が、人類最大の問題に今向かい合う。

 往復書簡なので、手紙は一通ずつ。本としても薄い一冊。さらりと読める本ながら、現代にも通じる示唆に富む議論が応酬される。結局、人類は2度の世界大戦を経てもまだ同じところをウロウロしている。それ程にこの質問は深い。

 個人的には、こういう理系と文系の対話(この表現が既に日本独特な考え方かもしれない)を西洋文明が大事にしていることに感心した。自然科学と人文知、それらは補い合うものであり、表題のような質問に答えるには方法論として両面からのアプローチが必要だ。「そういう問題があること」にすら多くの日本人は気づいていないのではないだろうか。理系は理系、文系は文系と、世界を分断してもこの世界を知ることができるわけもない。学問の価値…みたいなものがこの一冊に顕れているような、そんな気がする。一生懸命、国や世界や世の中を良くしようとするのに、研究分野など関係ない、ということだろうか。

 戦争について考えてみたい人がまず読むべき一冊。