二十四の瞳 壺井栄
大石先生は新任女教師。島の岬の小学校へこの春から務めるのだ。1年生は12人の子どもたち。小さな学校へ先生と子どもたちの暮らしが始まる。しかし、時代は日本の国を第二次世界大戦へと突っ込ませていく。成長した男の子たちは戦争にとられていった。銃後の女子供にも時代の苦しみがのしかかる。
戦争は戦場で兵士たちが行うだけではない。その背後には無数の普通の人々がいる。そして、戦争はそういった普通の人々からもすべてを奪っていく。ときに命さえも。戦争とは1つの時代なのだ。苦しみに溢れた、非道い時代なのだ。
そんな戦争の中の普通の人々をリアルに描くこの作品。登場人物たちが、まるで村の近所の人々のように生き生きと描かれる。その「生き生き」のなかには喜怒哀楽が全てある。そして、その生き生きとした人々を戦争という黒い雲が押しつぶす。
今は戦争が忘れられつつある時代だ。かつての痛みを忘れ、国々は対立を高めつつある。今こそこんな本が読まれてほしい。すべての日本人に読んでほしい一冊。