続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

コンテナ物語 Mark Levinson

 

 本を書くのはそもそも孤独な作業だが、「コンテナ物語」はとりわけ孤独だった(著者)

 

あらすじ

 本書に描かれるのはコンテナの歴史だ。コンテナとはでかい箱である。船に乗せ、貨物列車が運び、トラックで高速道をを運ばれる。だれもが見たことがあるであろう、そうあの箱である。そのコンテナは実は輸送業界の常識をひっくり返し、この世界のあり方を一変させたのだ。

 

優れた思想が世界を変える

 細かいことは実際に本を読んでもらうとして、コンテナを用いた卓越した効率的輸送という思想をこの世にもたらしたのはマルコム・マクリーンである。彼はもともとトラックでの陸運業者であったが、卓越した才能で海運業に参入した。そして気がついてしまう。荷物の上げ下ろしに無駄が多すぎる、と。そして思いつくのだ。「でかい箱」を。荷物を箱詰めして運べばいい。大きい箱を運ぶならクレーンを使う。荷物を一個ずつ運ぶより圧倒的に効率的だ。引っ越しを思い浮かべてほしい。段ボール箱に荷物を整理すれば荷物の運搬はあっという間なのだ。バラバラの荷物をごちゃまぜに載せるなんてナンセンスである。「でかい箱」を船で運び、クレーンでスムーズに汽車やトラックに載せる。実に効率的だ。結局のところ、このマクリーンの思想が世界の運送業界を変えた。優れた思想はそのシンプルな力強さゆえに世界を変えてしまうのだ。いまや、コンテナに頼らない大企業はない。そして、その恩恵に預からぬ日本人はいない。マクリーンの優れた思想は僕らの世界を全くもって変えてしまったのだ。

 

変化に必要なもの

 とはいえ、思想だけで世界が変わるわけではない。思想を事業という形で現実に落とし込んでいくことが必要だ。事業のを軌道に乗せることも必要だ。そのためには知恵と大胆な行動。きっとマクリーンと同じ思想を持つ人は世の中に無数にいたのだろう。コンテナリゼーションの革命が始まるのは時間の問題だったと思う。しかし、それを実現するための要素が揃っていたのはマクリーンだった。

 

 今はあちこち行き詰まった感じがする世の中。何かを変える優れた思想の出現が待たれているように思う。いや、思想はあってもそれを実現することが難しい。この本には思想が世界を塗り替えていく過程が書いてある。それは一例に過ぎないが、0と1の間は大きい。ベンチャー企業で働く人とかに読んでほしい一冊。