続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

アンパンマンの遺書 やなせたかし

 

アンパンマンの遺書 (岩波現代文庫)

アンパンマンの遺書 (岩波現代文庫)

 

  「やなせたかし」といえば誰もがご存知のアンパンマンの生みの親。そんな著者が自らの人生を書き綴る一冊。

 

 出版が1995年。著者は1919年生まれなので70代なかばごろに書かれた本だろうか。その後、著者は2013年に94歳で亡くなる。本が書かれてから人生にはまだ少し道のりがあるようにも思えるが、この本を読むと著者が社会人としての人生をしっかり全うしたことがわかる。あとの20年は、個人の人生を楽しんだのではなかろうか。

 

 人生は波乱万丈で曲がりくねった道である。著者のような人でもそれは変わらないらしい。絵を仕事にしようと思うものの青春を戦争に踏みにじられる。まだ焼け跡だらけの東京へ上るも貧乏暮らし。ポスターなどを書いて暮らしながら漫画の世界を目指すもヒット作には恵まれず。とはいえ、人の出会いに恵まれて、舞台の脚本やデザイン、アニメなど、色んな仕事をやり続け、ついにはアンパンマンを生み出す。

 

 まさに波乱万丈という人生。しかしやはり世の中に大きな影響を与えたこの人は、普通ではないところがある。1本筋が通っている、という感じだ。根っからの自由主義者で権力が大嫌い。仕事はなんでも引き受けるが、その中で自分なりの「思想」をはっきり示し続けている。これが、普通人にはたぶんできない。個人としてしっかり立ち上がるということは今の世の中ではとても難しい。

 

 ぼくも自由が好きだ。権力に押しつぶされるなんてまっぴらだ、と思う。しかし一方で、生きるために仕方がないと思うところもある。自由な生き方が怖いと思ってしまう時がある。だから著者のような生き方に憧れる。ぼくは、こんな風に生きられるだろうか。