代表的日本人 内村鑑三 著 鈴木範久 訳
明治時代。日本は荒れ狂う西洋文化の波に揉まれていた。そんな中で「西洋に対し日本人とはこういうものだ」ということを示そうと、英語で出版された一冊。そこには、西洋文化の激流の中で、それでも自国の文化や思想を失わずに生きたいという著者の考えがみえる。
紹介されるのは、西郷隆盛、上杉鷹山、二宮尊徳、中江藤樹、日蓮上人の5名。それぞれ、社会のために生きた政治家、優れた地方領主、努力と勤勉の聖人、真の教育者、世を正す宗教家、というところだろうか。
現代は、インターネットの普及により、ありとあらゆるものが高速化して社会の壁が薄くなってきた。地球上の社会が均等になろうとする一方で、自国意識が高まりつつ有る。America firstなんて言葉もずいぶん当たり前のように聞こえる。均質化と差別化のバランスのなかで、今は差別化が求められる時代なのだろう。こんな時代において「日本人らしさ」をぼくは見失っているような気がする。この本は、そんなぼくに少しヒントを与えてくれたのではないだろうか。
とはいえ、自国第一主義が素晴らしいことだとは思わない。行き着く先は戦争しかないように思う。ただ、自国に対して誇りを持つことも必要では有る。国を維持していくのであればだが。今の時代には、この本は冷静に読まなければいけないかもしれない。