志賀直哉自身が選んで編んだ短編集。
一本十五分もあれば読める短編ばかりだが、なにかとても爽やかで心地の良い読後感を味わえる。ぼくはどうも志賀直哉の文がとても好きらしい。恥ずかしながら志賀直哉の文を読んだのは初めてだ。もっと早く読んでおけばよかった。
文章を読むとその場面が頭に浮かぶ。そのプロセスがとてもスムーズでクリアだ。これはたぶん鋭敏な観察眼と清廉に徹した文章構成から来るのだろう。実に簡単な文章のようにみせることこそ、本当に難しい技術であろうと思う。
しばらく志賀直哉の作品を読み耽ろうと思う。なにかとても大事なものが得られるような、そんな気がなんとなくするのである。