続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

清州会議 三谷幸喜

 

清須会議

清須会議

  • 発売日: 2014/05/14
  • メディア: Prime Video
 

 

「熱いな。だいぶ熱くなってきた」(織田信長のモノローグ)

 

原作・脚本・監督、全て三谷幸喜で作られた映画・・・の原作小説。映画のほうも昔観たかな?細かくは覚えていないが三谷幸喜監督らしいコメディ群像劇で楽しく観たように思う。

 

時は戦国。天下統一を目前に織田信長本能寺の変明智光秀に討たれる。しかし織田家家臣、特に羽柴秀吉中国大返しにより明智はすぐさま討ち取られる。日本の歴史上最大の下剋上とその落とし前はついた。次は主君を失った織田家の建て直しである。次の権力を握るため、織田家家臣たちは動き出した。直情的で武功をたててきた柴田勝家。謀略と人心掌握の術に長ける羽柴秀吉。2人と、その仲間の思惑が交差する。

 

まず形式が面白い。登場人物たちのモノローグで描かれる物語は非常に内面的だ。ひとりひとりの行動の理由付けがはっきりされていていい。もちろん、映画でも登場人物の心の内を感じることはできるのだが、文字で読むとまた面白みが違う。この小説を読んだ上でもう一度映画をみるとまた違った楽しみ方が出来るような気がする。

 

歴史小説ということで食わず嫌いする人にもこの本なら安心だ。なぜなら全て「現代語訳」された文章だからだ。「いや、現代に書かれた小説だから当たり前だろう」という人もいるかもしれないが、この現代語訳は「現代語で書いた」という意味である。「古語を現代語で訳した」という意味ではないのだ。非常に読みやすい。歴史に弱いぼくでもすらすら読める。

 

そして、清州会議という舞台を選ぶあたりに三谷幸喜の鋭さを感じる。ぼくのような歴史に疎い人間は戦国時代と聞けば戦ばっかりやっていると思っている。しかし、戦国武将というのは政治的な力も求められるのだ。ときに愚直に、ときに謀略を巡らし、自分の力を伸ばさんとする。その意味で、織田家の跡継ぎを選ぶ清州会議はまさに大舞台であった。ここを読むだけで、戦国時代というものや、登場人物の関係性が実によく感じ取れる。もちろんフィクションもあるとは思うのだがそれでもそこには「戦国の風」がある。

 

というわけで実に楽しく戦国時代を感じることの出来る一作だった。気楽に歴史小説を楽しんでみたい人におすすめの一冊だ。