続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

極道記者 塩野利雄

 

極道記者 (徳間文庫)

極道記者 (徳間文庫)

 

 

 主人公・松崎は競馬新聞の記者。しかし、その裏で彼は賭け事にのめり込み、裏社会すれすれの世界で生きていた。百万単位の金を手にしたかと思えば、数日で手元に1万円も残らない。ヤクザものとこじれることもある。迫真の描写で描かれるギャンブルの世界。

 

 どうも解説によれば作者の塩野自身がまさに松崎のような男であったらしい。身を切るようなギャンブル漬けの生活。本作の手に汗握るギャンブルシーンの数々は、本人の実体験からくるもののようだ。ギャンブルの描写は端的で緻密だ。複雑な人間心理がないまぜになった独特な場の雰囲気が感じられる。まるで、その賭場に僕自身が居合わせているようだ。人をひきつけ、天国にも地獄にも送り込む、ギャンブルのという化物がそこに居る。

 

 同時に、賭け事に狂いまっとうに生きるすべを失った男たちの生活が描かれる。松崎をはじめ、彼らは明日をもしれぬ生活を送っている。それでも、有り金を賭場で一夜のうちに失ってしまう。金を借りて、それも全部掛け金につぎ込んでしまう。一方で、ときに大当たりを叩き出し、悠々自適な生活をほんの一瞬味わったりもするのだ。

 

 ギャンブルは怖い。でもそんな世界を覗き見たいという人は多いのではないだろうか。そんな人におすすめの一冊。