第二楽章 ヒロシマの風 吉永小百合編 男鹿和雄画
第二次世界大戦の終わりにヒロシマは地獄と化した。原爆である。この本は被爆者やその関係者の詩を集めたもの。そして、ジブリ映画の美術監督として有名な男鹿和雄がその詩感を美しい絵にして添える。
個人的に「詩」というのは苦手だった。サラリと読めるが情報量が少なくおもしろみにかける、と。
しかしこの本でそんな印象はふっとんだ。詩は、短い言葉は、ときに原稿用紙にびっしりと書いた文字よりも多くのことを伝えるのだ。
この本にはヒロシマで生きた人々が、人々の生活が、下手な資料より生々しく記録されている。地獄の中で焼けただれ死んでいった人々、親を、子供を、家族を失った人、全身がくずれてなお生き残った人。復興が進んでも、人々の心には暗い影がさす。平和を支えているのは無数の人々の悲しみなのだと知る。
詩なので子供でもサラリと読めるだろう。男鹿和雄の絵も美しく、そして詩の内容を見事に汲み取っている。この本に記された悲しみは受け継いでいかなくてはいけない。平和を支える一端なのだから。だから今、子どもたちにこそ読んでもらいたい一冊だ。