続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

千と千尋の神隠し

 

千と千尋の神隠し [Blu-ray]

千と千尋の神隠し [Blu-ray]

  • 発売日: 2014/07/16
  • メディア: Blu-ray
 

  小学生の千尋は家庭の都合で引っ越しすることに。引っ越しのその日、お父さんの運転する車は奇妙な道に迷い込む。その先には遊園地の廃墟・・・ではなく、八百万の神様が疲れを癒やしに来る異界・油屋であった。神々の世界に迷い込んだ千尋は無事にもとの世界へ帰れるだろうか。

 

 子供の成長をこんなに描いたアニメ映画は他にないだろう。最初、千尋はお父さん・お母さんにくっつくだけの、金魚のフン的な存在だった。子供らしいといえば子供らしいが一人の人間としては実に頼りない。しかし、油屋で働くことになり、千尋は・・・いや千は驚くほどに成長する。他人とコミュニケーションをとり、自分の意志を示し、自ら行動する。当たり前のことかもしれないが、子供は成長するのだ。しかも大人には驚くべき早さで。その子供の成長を映画にしたのは宮崎監督の着眼点の鋭さにほかならない。

 

 一方で、ナウシカから連綿と受け継がれる宮崎映画の思想がこの映画にも受け継がれている。つまり「精一杯生きる」ということだ。千尋は異界というとんでもない荒波に放り込まれる。小学生というモラトリアムの中にあった(当然だが)千尋は、突如油屋という社会の中に置き去りにされる。湯婆婆と契約し、仕事につき、過酷な労働に従事する。その理不尽さ。しかし千尋は順応し、成長し、そこで生きることを学んでいく。

 

 人間は生まれ落ちる時間や場所を選ぶことはできない。自分の脳力も思うようにはならない。人間の世の中は理不尽で不完全なものだ。どんな社会システムも欠陥を抱えている。世の中はひとりの人間にとってただただ過酷なものだろう。それでもとにかく人は生きていくしかない。そして生きていていいのだ。