続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

読者ハ読ムナ(笑): いかにして藤田和日郎の新人アシスタントは漫画家になったか  藤田和日郎、飯田一史

 

 「ありゃ。・・・もう行っちまったかぁ・・・」(藤田和日郎

 

一流漫画家・藤田和日郎とその初代担当・武者正昭が新人漫画家へ放った言葉をまとめた一冊。ぼくは漫画家志望ではないが「モノ作り」に携わるものなら読むべき一冊だと感じた。

 

藤田和日郎のデビュー作「うしおととら」はぼくが小さい頃貪り読んだ少年漫画だ。ぼくにとって少年漫画とは「うしをおとら」である。だから、以下の文章にはがっつりひいき目が入っているだろう。それでもよければ読んで欲しい。

 

藤田の制作理論と、武者の人気を得る理論がこの一冊に集約されている。同時に。漫画の現場というものがこの2人の関係性から垣間見える。漫画とは爆裂な魂の表現と、それの一般化なのだ。前者を漫画家が、後者を編集者が担う。少なくとも、それが日本の漫画制作の現場である。

 

漫画家を目指すなら、この本を読むべきだろう。だが、これも業界の一端に過ぎないことを忘れてはいけない。この一冊を根拠に漫画家をあきらめるようなことが有ってはならない。

 

日本独特とされる漫画の現場だが、その実、もっとも純粋なモ作りの現場だと感じた。作りたいモノと読者が求めるモノのせめぎ合い。その最大公約数をめざす漫画家と編集者のせめぎ合い。これほど健全なモノ作りの現場が有るだろうか。漫画家はすごい。そのことをわからせてくれる一冊だ。