続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

9つの、物語 橋本紡

 

  ゆきなは大学生。読書家のお兄ちゃんと二人で暮らしている。大学では彼氏もできた。でも、おかしなことがある。お兄ちゃんは死んでいるのだ。9つの有名文学を章に冠して、心温まる物語を送る。

 

 表題はサリンジャーの「Nine stories」から。章のタイトルはいろんな文学作品から取られている。そこのとこが気にいって何気なく購入した。とくに「山椒魚」と「ノラや」が入っているのがいい。

 

 中身は、なんというか、少女漫画の世界だった。両親は長期の海外旅行中。お兄ちゃんは読書家で賢くいつも優しい。女にもモテて彼女をとっかえひっかえしている。彼氏も優しい映画好きの好青年。ケンカしても最後は謝ってくれる。ついでに、ゆきなの大学の同級生には、ちょっとヤンチャでゆきなに気があるものの、男女ではなく友人としての立場を堅持してくれる男の子もいる。そういえば、登場人物には女の子がほとんとどいない。そして、おにいちゃんは幽霊なのだ。どういう奇跡かしらないが、ゆきなにとって切ない別れを予感させる。こんな感じで夢見る少女の理想をそのまま描いた作品だった。

 

 個人的にはいまひとつ楽しめなかった。あまりにも甘ったるい。おっさんには胸焼けである。