続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

歴史探偵 忘れ残りの記  半藤一利

 

歴史探偵 忘れ残りの記 (文春新書 1299)

歴史探偵 忘れ残りの記 (文春新書 1299)

  • 作者:半藤 一利
  • 発売日: 2021/02/19
  • メディア: 新書
 

 自称・歴史探偵、半藤一利のエッセイ集。ここに収めされたあとがきが氏の絶筆であるという。

 

 ぼくが著者を知ったのは5年ほど前だろうか。当時ジブリブームが個人的におこっており、そこから派生して宮崎駿監督の著書を読読み漁っていた。さらに派生して歴史や思想というものに興味を持ってみたり。片っ端から宮崎駿情報を探していたらふと観た動画サイトに宮崎・半藤の対談があるではないか。宮崎監督目当てで動画をみたが、今度は監督が絶賛する半藤一利にも興味が湧いた。いつかこの人の本も読んでみようと、思っていたらなんとお亡くなりになってしまった。もっと早く読めばよかった。

 

 内容は章の見出しが明瞭に表している。順に、昭和史おぼえ書き、悠々閑々たる文豪たち、うるわしの春夏秋冬、愛すべき小動物諸君、下町の悪ガキの船出、我が銀座おぼろげ史である。おもしろいもので、短いエッセイの数々からは、著者が生きた時代の香りがする。このあたりはさすが歴史探偵というところか。文字にするというのは大したものだ。著者が生きた時代も経験もすでにぼくらからすれば忘却の彼方昔のことなのに、つい先日のことのように感じられる。確かにそういう時代があったのだと、今を生きるぼくらにも実感させてくれる。歴史探偵は最後の最後まで歴史を綴ったということだろうか。

 

 ところで、このブログを書くために改めて「忘れ残りの記」と検索したら、これは吉川英治のエッセイ集の表題からとったものであるようだ。最後の最後まで慎み深く、歴史と文学への愛情を感じる。半藤一利の人柄がこの表題にあらわれているのではないだろうか。