続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

エンジェル エンジェル エンジェル 梨木香歩

 

エンジェル エンジェル エンジェル (新潮文庫)

エンジェル エンジェル エンジェル (新潮文庫)

 

 「でも、熱帯魚って金魚鉢の中で飼うような訳にいかないんだよ。温度を一定に保って酸素を送ってやらなきゃ」(コウコ)

「なぜそんな無理な事をするの」「そういう風に生きてるのって、無理で、不自然だ」(さわちゃん)

 

主人公・コウコは高校生。忙しい毎日に疲れて熱帯魚に癒しを求める。親に熱帯魚を飼う許しを得るため、コウコはおばあちゃんの夜のトイレ当番を引き受ける。おばあちゃんは痴呆気味所々でおかしな言動をとる。現代を生きるコウコと、思い出の世界を生きるおばあちゃん/さわちゃんのモノローグが繰り返され、人の世の苦しみが描かれていく。

 

うーん。だめだ。感想を言葉にうまくできない。

 

さらっと読める短い小説なのだ。文庫本で150ページ程度だ。読書慣れしている人なら読むのにそう時間はかからないだろう。でも、なんとも言えない深みがあるように感じる。それは作者が巧妙に仕組んだロジックなのだと思う。しかし、あまりにも巧妙でさらりと読めてしまう。

 

ここに描かれるものは、たぶん人生とか、信仰とか、生きることの一部なのだと思う。これらは人間に必要不可欠なもので、たぶんそれは人間が不完全だからこそであろう。

 

人間は不完全で、端から見れば簡単に解決できることでも、本人同士の間ではどうしてもうまくいかないこともある。それが、実は思った以上に当たり前で、小説のようにうまくいくことは稀なのだ。どうしたって人間一人の力でコントロールできることの方が少ない。それでも人間は生きていくしかない。そんなリアリティをうまく描いた作品では無いだろうか。