続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

よるのばけもの 住野よる

よるのばけもの

よるのばけもの

「……また、明日も来てくれ、る?」(矢野さつき)



主人公のあっきーは夜になると化け物になる。理由や機序はわからない。ただ、夜になると突然黒いつぶつぶで形成された、目が8つ、足が6つ、尻尾がたくさんある化け物になるのだ。大きさも自由自在。身体能力は人間を凌駕する。「夜」を適当に楽しむ生活を送っていたあっきーはある日宿題を学校に忘れ、化け物の姿で宿題を取りにいく。そこには、クラスのいじめられっこ矢野の姿があった。2人の奇妙な夜休みの日々が始まる。

設定が個人的にストライクだったので購入。帯に書かれた「夜になると、僕は化け物になる」でぼくのハートは鷲掴みである。

物語は主人公の視点で進む。変わり者に見えるためクラス中からいじめの対象とされている矢野。そのクラスの中のパワーバランスやいじめの構図が説得力のあるリアリティで描かれる。今思うと、学校のクラスってこんなにも閉鎖的な独特の空間だったのか。

丁寧なキャラクター描写で、次第に矢野がどうしていじめられているのか。不可解な矢野の行動の意味が見えてくる。教室の中の人間関係もはっきりしてくる。そして、このいじめがどうしようもないこともわかってくる。しかし、これは全て主人公の側から見えることに過ぎない。実は主人公自身もずれている、というのがこの物語のミソである。

個人的にはアニメとか映画向きの作品だと感じた。簡潔な文章ながら、読むと映像が思い浮かぶ。昼と夜を交互に展開する場面展開も映像向けに思われる。ただ、正直映画化されても観たいかといわれると微妙だ。ストーリーがシンプル過ぎてパンチ力がない。ただ、女子少学生ー中学生あたりに受けそうな気がする。