続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

真夜中のパン屋さん

 

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ (ポプラ文庫)

真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ (ポプラ文庫)

 

 

「何せ変態だからね。彼女のすべてを知ってるんだ」(斑目

 

真夜中の東京。そこにブランジェリークレバヤシというパン屋がある。営業時間は23-29時。絶品のパンを作る真夜中のパン屋さんには、ワケありのお客が吸い寄せられる。

 

読了してまず最初の感想は「少女漫画だなー」という感じだった。深夜営業のパン屋さんという現実離れした舞台。ぶっきらぼうだけどかっこいいパン職人、パン作りは下手だけど優しく柔和なメガネのおじさん。そして、そこに居候するヤサグレた女子高生(主人公)。社会の表に現れない、暗闇を抱えたお客さんたちはブランジェリークレバヤシを中心に複雑に絡まり合い、物語を紡いでいく。

 

非常に読みやすい文章で、読者を引き込む力も充分ある。だが、どうしてもご都合主義感が否めない。いや、小説なんて作り話なのだから「どう都合をつけるのか」っというのが大事なのだが、どうにも本作の作りは荒いように感じた。「オカマバーのママからホームレスに転落したソフィアがたまたま同居した自称ネコのミケがある重要人物の母親」なんてのは、強引すぎるぜ、デウス・エクス・マキナという感じである。

 

結局、何より腑に落ちないのは「このパン屋、深夜営業である必要あるのか?」だと思う。暗闇を抱えた客が集まるという舞台設定としてはいのかもしれないが、パン屋がそんな客を集めるために営業するわけがない。少しでも多くの人に自分たちのパンを味わってもらうためなら昼にオープンすべきである。少なくとも資本主義の今の世において、深夜営業のみのパン屋さんが存在するとは思えない。だからこそファンタジーなのかもしれないが、扱うテーマが重いリアリティがあるのでどっちつかずである。

 

とはいえ続きが気になる、のめり込んで読める作品ではある。特に中~高生の女の子には受けそうだ。おっさんにはあまりおすすめしないが。