続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

火垂るの墓 野坂昭如

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)

ジブリ高畑勲監督が映画化したその原作。

淡々と書き綴られる清太と節子の戦時下での暮らし。句点で区切りながら長々と続く一文を多用することで、年相応に、考えをまとめきれれず苦悩する様子が描かれる。

この小説は誰目線で書かれているのだろう。登場人物ではない。神の目線とでもいうべきもので綴られる。それがなんとなく恐ろしいというか、不安をかき立てる。

おそらくはこの目線は作者のものなのだろう。作者は清太と近い境遇で妹を亡くし、自分だけが生き残ったことに苦しみ、妹に捧げるつもりでこの作品を作ったと聞く。自分も清太と同じように死ぬべきではないか。そんな苦悩がこの目線に凝集されているように感じる。