続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

オードリー・タン デジタルとAIの未来を語る オードリー・タン

 

「自発性」「相互理解」「共好」(デジタル社会で求められる三つの素養について、著者)

 

 COVID−19の混乱が世界に広がる中、台湾社会はは初期から非常に良い動きを示した。その立役者のひとりが著者であるオードリー・タンである。デジタル技術に強い著者の視点で、これからのデジタルと社会のあり方を語る一冊。

 

 読み終わってまず思ったのは、著者の思想はすばらしいということ。個人的に好きな考え方だ。単純に言えば「自由」「平等」「博愛」というフランス革命の精神に通じるものではなかろうか。つまり、シンプルで健全な、ある意味理想的な民主主義の精神である。

 

 一方で、著者は非常に冷静に現実を直視している。世の中には色んな考え方や仕組みがあって、民主主義の機能だって完全なものではない。現代の民主主義には原理を欠くところがあるし、そのシステムのほつれから社会に取りこぼされていく人々もいる。だからかそ、著者はインクルージョン(包括)という概念の重要性を説いている。そして、AIを含むデジタル技術を活かすことで、取りこぼしのない包括的な社会を築くことを訴える。

 

 台湾という島は、いろんな意味で日本という島国と環境的にはよく似ているように思う。しかし、その中に生きる人々には随分と違いがあるようだ。その違いはは、たぶん民主主義を勝ち取ったかどうかの違いではないだろうか。時代が大きくうねろうとする今、日本は台湾に学ばねばなるまい。