天才はあきらめた 山里亮太
お笑いコンビ・南海キャンディーズのツッコミ役山ちゃん。今でこそ一流のお笑い芸人だが、そんな彼ももちろんずいぶん苦労してきた。そんな山ちゃんが芸人を目指し売れるまでの半生を振り返る一冊。
今でこそテレビに映っていても全く違和感の無い南海キャンディーズだが、デビュー当時は完全にイロモノだった。スカーフを巻いたキモイキャラのおっさんと大女のコンビだ。当時のお笑いの主流はしゃべくり漫才かコントだった。そのどちらでも無い路線でこのコンビは売れていくのだが、テレビに映るまで、そして映ってからも色々苦労があるようだ。芸能人は大変である。
テレビのキャラクターに反してこの人は大変努力家であったようだ。とにかく反省と改善を繰り返し、芸を磨き続けてきたのだ。反省しすぎで負のスパイラルに落ち込むことも多い。そして同時にめちゃくちゃ性根が悪い。ストレスが溜まるとそれを相方せいにしてしまう。それが原因でコンビが解散したこともある。
しかし、この人の凄さはその己のネガティブな面さえも原動力に変えていったことだろう。感情の負のスパイラルカラ逃れるために必死に暗中模索し、他人への恨みつらみを「いつか見てろよ」という気持ちに昇華する。こういうことは出来そうで出来ない。案外難しいのだ。人間はやめる理由があるならそれに飛びつきたくなってしまうものだから。さらに、そういう楽になりたい気持ちさえも、仕事に打ち込むエネルギーに変換しているのだからすごい。
あと、作中山ちゃんが「もう芸人をやめよう」と思い立つエピソードがある。その時とある芸人仲間に救われるわけだが、その下が実にいい。仲間っていうのはこういうものなんだと思わせてくれる。
仕事が嫌で嫌でたまらない人におすすめの一冊。