続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

エリジウム

エリジウム (吹替版)

エリジウム (吹替版)

  • 発売日: 2013/11/26
  • メディア: Prime Video

 今から100年ほど未来。地球環境は崩壊していた。選ばれた人間たちは宇宙にコロニー・エリジウムを作り生活拠点をそちらへ移した。一方、荒れ果てた地上ではエリジウムの植民地のような扱いになり、人々は非道い差別の中を生きることとなった。主人公・マックスは元悪党。現在はまじめに労働する道を選ぶが、いつ首を切られるかわからないような奴隷状態。そして社員のいい加減な指示のせいで大量の放射線を浴び残り5日の命とされる。マックスは裏ルートでエリジウムへと登り、医療ポッドへ入ることを決意する。

 うーん。いい加減なSF。まぁエンターテイメントとしては可もなく不可もなくというところだろうか。ハリウッド映画らしく頭空っぽに
してみるのが正解と思われる。

 とはいえ、映画を通してアメリカ社会の問題みたいなものを描こうと努力していることは伝わる。地上とエリジウムの格差は貧富の格差問題を端的に表しているのだろう。そして富める者が貧者を支配するという構造。その人間性の無さを痛烈に批判しようとしている。資本主義的民主主義が抱える大きな問題がやはりアメリカ社会にも根を伸ばしている。そして当然の帰結として、この映画の物語は革命であり、世界を根底から覆すお話なのだ。そういうお約束ものとしては良くできている。

 ユートピアディストピアを同時に描いたというのがこの映画のちょっと面白いところではないだろうか。SFでは未来が繁栄したユートピアである場合か、崩壊したディストピアである場合が多い。この映画は宇宙にユートピアを築き、地球をディストピアとしたことで異なる未来のビジョンを同時に提示したことが面白い。そして、同時に人類が分断される未来を描いたのだ。歴史が示すように、分断の行き着く先は衝突である。異なる集団が触れ合う時、歴史が示すように片方は他方を滅ぼしかねない。近年は分断が深まる時代である。人は調和のために、一体なにができるのだろうか?