きりぎりす 太宰治
- 作者: 太宰治
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1974/10/02
- メディア: 文庫
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負けた、これはいいことだ。そうでなければいけないのだ。(黄金風景より)
太宰治はつくづく優しい。周りの人の一挙手一投足、一言に必要以上に感じ入り、そして悩む。この短編集ではそのようなエピソードが描かれる。ほんの些細なこと、忘れて今を楽しべば良いこと。でも、そうできない人間もいる。あまりにストイック。あまりに理想主義。それでも日々を生き抜こうとする足掻き。そういったものを感じる短編集だ。
ぼくが気に入ったのは『畜犬談』。犬が嫌いだ嫌いだという主人が、なんだかんだで犬をペットにするお話。なんとも可笑しいお話で、太宰治らしくないが、この短編集の中で休憩所のような位置付けになっている。ツンデレの走りかも知れない。