続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

魍魎の匣 京極夏彦

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

文庫版 魍魎の匣 (講談社文庫)

『命ある限り人間は人間だ!生命の尊さに変わりは無い。』(美馬坂 幸四郎)

京極夏彦は相変わらず分厚い。彼の本を購入する際には、いつも少しばかり気合をいれてからでないと買えない。しかし、なんという面白さ!

京極夏彦は読者がページをめくることを考慮し、適切な場面でページが切り替わるよう文章を調節しているらしい。すなわち、彼は文章を読む際の読者の一挙一動にまで気を配り作品を作っているらしい。そういうところが、これだけ分厚い本を読み切る手助けになっているのだろう。

物語は関係あるような、ないような、4つの事件として描かれる。もちろんこれらは一編の物語の中に含まれる以上、全く関連性がらないわけではやってない。しかし、その関連性は陽炎のように不確かで、しかしそれでいて確かな存在感をはなっている。これが実に魍魎というモチーフとしっくりくる。ほんとうに京極夏彦は「よくわからないもの」を描くのがうまい。物語が展開する前半は事件の確認的な意味合いもあり、今ひとつ盛り上がりにかける。しかし、絡まった紐が解け始めると、実に爽快だ。それでいて「よくわからないもの」は確実に存在し、作品全体にグロテクスな感じを漂わせ続ける。この辺は江戸川乱歩にも通じるものがあるように感じるが、そもそも妖怪をモチーフとする作品なのでグロテスクが伴うのは必然なのか。