続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

竹取物語 阪倉篤義工訂

 

竹取物語 (岩波文庫)

竹取物語 (岩波文庫)

 

 

高畑勲監督の「かぐや姫の物語」を何度かみてるうちに思った。かぐや姫ってこんな話だったっけ?かぐや姫は子供の頃に絵本で読んだ程度だろうか。よく考えるとかぐや姫のちゃんとした原作はよく知らない。ならばと思って読んでみた。

 

読んでなるほど。高畑監督は実にしっかりと原作通りに映画を作っている。捨丸を加えた以外はほとんど原作通りに映画化されていた。

 

これが日本最古の物語だというのだからすごい。実に想像力豊かに、ときにはジョークも交えながらお話は進む。竹から生まれたのは実は月の国の人だから、という落ちも改めて思うとすごい。さらには地上へ堕ろされたのは姫がなにか罪を犯した罰であるという。「姫が犯した罪と罰ー」というのは高畑監督のかぐや姫のキャッチコピーであるが、これは映画オリジナル設定かと思っていた。原作にもちゃんとあるのね。

 

今よりはるかに「生きる」ことが大変だった時代。人々はその苦しみの原因は地上が穢れた地であるためと考えていたのだろう。そして、天井には穢れなき国があると信じ、いつかはそこへ行けるかもしれないと思ったのだろう。物語を通して平安の人々の思想が垣間見える。改めてすごい作品だと思った。

スプリング・ブレイカーズ ジェームズ・フランコ

スプリング・ブレイク。アメリカの大学生達の春休み。それは特別な開放感に包まれる特別な長期休暇。女子大生4人組は、ハメを外すためフロリダへ。旅の資金をまさかの銀行強盗で稼ぎ、はちゃめちゃな旅が始まる。

あんまり深いことは考えずに観れる映画。基本的には調子よく、あとエロい。おっぱいとかぼろんぼろん出てくるので、途中から「おっぱいって別に隠さなくていいんじゃ」という気がしてきた。

冒頭で主人公たちが銀行強盗をしでかすことで全体的に暗いものが旅の最中につきまとう。まぁ旅の中身もハメ外し過ぎててかなりやばい感じではあるんだけれど。そのどんよりとした感じがアルコールのように効いてくる。どことなくカルトっぽい匂いが漂うこの映画。たまにはこういう毒っぽいものもありかもしれない。

宮本武蔵 (六) 吉川英治

宮本武蔵(6) (吉川英治歴史時代文庫)

宮本武蔵(6) (吉川英治歴史時代文庫)


「富士は、1日でも、同じ姿であった事がない」(武蔵 )

武蔵もいよいよ円熟期。弟子、伊織を得て師としての武蔵の顔が見えてくる。途中、山賊に襲われる村を村の民を先導して守るなど、人を率いる力を武蔵が示し始める。個としての力を示してきた武蔵が一皮向けた瞬間だと感じた。

美人画報 安野モヨコ

美人画報 (講談社文庫)

美人画報 (講談社文庫)

安野モヨコのエッセイ。僕自身は安野モヨコって人の作品をよく知らない。この間読んだ「脂肪という名の服を着て」しか読んだことはない。あと知ってるのははエヴァの監督の嫁さんということぐらい。

さて、このエッセイでは著者が徒然なるままに美について思うことを書き綴る。美を意識することで、自分も読者も美人になれるのでは、という触れ込みだ。

メイクだ、福服だ、生活習慣だ、心のもちようだ、ととかく美人になるのは大変だ。おっさんはついていくので一苦労である。

この本を読んでわかったことは、女の子がウィンドウショッピングが好きな理由である。どうも女の子ってのは手に入れたい理想の何かをいっぱい抱えていて、それが世の中に無いかとフラフラ探し回るものらしい。ウィンドウショッピングはぼくには全く理解できない行動なのだが、それは僕の中に理想がなくお店にあるものから自分の需要に応えてくれるものを探す、というスタンスだからだろう。おっさんなりに勉強になった…だろうか。

カメラを止めるな 上田慎一郎

いろいろと話題の一作。やっと地方でも見ることができた。

全体とおして映画を楽しめる良作。アイデア自体はありがちだけど、見せ方が面白い。脚本がいいという評判はなるほどというところ。

表を整えるために裏ではドタバタ喜劇が進行する、という構図はありがちだ。三谷幸喜っぽい。しかし、多くの場合は時系列に沿って進む物語を、本作はラスト、つまり出来上がった「表」からスタートしたのがいい。またドタバタ劇の舞台としてホラー映画の撮影現場を選んだところも面白い。ホラー映画独特の妙な間や会話のおかしさを、いい感じに活かしている。

さて、ここまでなら「作りのいい映画」である。この映画がおもしろいのは、ドタバタ劇の中で本音をぶちまけていく登場人物たちだろう。理屈っぽい男優はトラブル続きの現場で理屈をふっとばして演技する、調子のいいことをいうだけの女優は、やけくそでまじの顔をみせる。クセモノ揃いの現場をまとめる監督はブチギレて言いたいことを言ってしまう。

このブチまける感じを日本人は求めているのかもしれない。SNSがやたらと進化した世の中で、みんないいたいことも言えないのだ。ポイズン。うかつな発言をすれば、あまつさえ文字に残せば、誰かが拡散し、どこかのだれかが文句をつける。世の中の全ての人が納得することなどまずないのだ。みんな抑え込んで生きている。

映画の登場人物は、みんな作中の映画の中でブチまける。現実では無理でも、映画の世界で、演技の中ならブチまけられる。それに爽快感を覚える人が多いのだと思う。

また映画作りの現場のおもしろさを感じられるのもいい。最近の映画は、特にハリウッドで顕著だが、映画を撮影している現場が想像できないものがおおい。CGなんかが進化しすぎて、もう俳優もいらないんじゃないかと思う。マーベル映画とか、やろうと思えばCGだけで作れるんじゃないだろうか。もちろん、それはそれで面白いのだが。どうやって映像を作るのか、8mm片手にあくせく奮闘している姿っていうのもいいと思う。映画って、もともとこういうもんなんだっていう、原点にたち帰るのもいいんじゃないだろうか。

陰陽師 天鼓の巻 夢枕獏

陰陽師―天鼓ノ巻 (文春文庫)

陰陽師―天鼓ノ巻 (文春文庫)

「飲め、博雅。今宵は、生涯に二度とあることのない夜ぞ」(晴明)

シリーズ第10作ぐらいか?いっぱいありすぎてよくわからなくなってきた。相変わらずの晴明&博雅コンビが深い平安の夜の闇のなか、奇々怪界な事件に出くわしていく。

個人的には霹靂神(はたたがみ)の一編がよかった。この一編では事件らしい事件はないのだが、逆にそれがいい。平安の闇の中にもおもしろきもの、楽しきものが存在する。いつもと少し違う切り口が面白かった。

世界を変えた10冊の本 池上彰



しかし、本にはとてつもない強さがあることも事実です。一冊の本の存在が、世界を動かし、世界史を作り上げたことが、たびたびあるからです。(著者)

さすが池上彰。わかりやすくコンパクトに、かつしっかりと重要性を持って、名著を紹介する。すばらしいプレゼンを見ているかのようで、スラスラ読める。この本自体も素晴らしい一冊だ。

登場する10冊は以下のもの。

アンネの日記
聖書
コーラン
プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神
資本論
イスラーム原理主義の「道しるべ」
沈黙の春
種の起源
雇用、利子および貨幣の一般理論
資本主義と自由

改めてみると、宗教に関わる本や経済論が多い。あとは科学関係の本も少し。少なくとも20世紀に世界を動かしたのはこういうものなのだろう。21世紀はどうだろうか?