メアリと魔女の花 米林宏昌
- 作者: スタジオポノック
- 出版社/メーカー: KADOKAWA
- 発売日: 2017/07/27
- メディア: 単行本
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『私…今晩だけは魔女なんだ!』(メアリ)
スタジオジブリが育て上げた米林監督がついにスタジオを独立し、映画を作り上げた。
全体的にジブリリスペクトに溢れる映画で、ほうきで空を飛ぶシーンは魔女の宅急便、魔法大学のマダムとドクターは湯婆婆と釜じい、魔法はハウル、液体状の敵はポニョの波、ラスボスはカオナシといった具合にオマージュに溢れている。
エンドクレジットの最後には『感謝』としてジブリの3大重要人物の名前がクレジットされている。なんだかそれをみて感動してしまった。米林監督が、自分の培ってきたものをしっかり師匠に見せつけた。これはそういう映画なのだろう。
内容もしっかり子供向けのドキドキワクワクする映画に仕上がっている。アリエッティのときにはあまりはっきりしなかった物語の波もあって、作品に引き込まれる。
細かいことが少し気になったが、これは2度3度みる中変わって行くかもしれない。かつてのジブリ映画もそういう作りになっていたのだから。
肉体の門 五社英雄
- メディア: Amazonビデオ
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毒のある映画が見たいと思ってAmazon prime Videoで視聴。
戦後。廃ビルを寝ぐらとするパンパングループがあった。リーダー格は関東小政の異名を持つせん。彼女らは独自のルールをもち、廃ビルに落ちてきた不発弾を御神体とあがめ、やくざな世の中を渡って行く。
生命力溢れる過激な描写をで、物語は悲しさを増していく。今の時代にこんな映画はもう作れないんだろうなあ。
ビートたけしの黙示録 ビートたけし
人間なんで生まれて、なんの目的で生きてきゃなかならないかってじっと考えると、自分ていうのは何にもないってとこに突き当たる(著者)
2000年頃に出版されたビートたけしが書きたい放題の一冊。社会情勢を中心に、著者なりの解釈が書き綴られる。
今読むと、先見の明を感じる話も有るし、バカらしい話もある。まあ大体この手の本はそんなもんだろう。
個人的に感銘を受けたのは「人生はサウナ」理論である。人生は苦しみに溢れている。死だけがその開放である。あともうちょっと、とサウナの中で耐えるとき想像するのは風呂上がりのビールなのだ。これだけ大成功を収めたビートたけしでも、そんな人生観をもっている。いわんや凡人をや、というところだろうか。
ダンケルク クリストファー・ノーラン
「俺は生き残っただけだ」(帰還した兵士)
「それで十分だよ」(毛布を渡すおじいさん)
時は第二次世界大戦。ドイツ軍はフランスへ侵攻。イギリス・フランス連合軍はドーバー海峡に面するフランスの小都市「ダンケルク」へ追い込まれていた。時の英国首相チャーチルは兵士40万人を救うべく、民間の船舶まで総動員する「ダイナモ作戦」を発動した。果たして連合軍兵士の運命や如何に。
この映画は戦争を舞台にした群像劇である。そして主人公が存在しない。数人の主要登場人物は出てくるが、彼らの名前を覚えるような機会はおそらくないだろう。登場人物たちは皆、立場や舞台は違えども名もなき一兵に過ぎない。
戦争をこんな風にとらえた映画は個人的には初めてでとても新鮮で強烈だった。戦争の中の英雄や困難に立ち向かう人々をスポットを当てることはせず、ただ淡々と普通の兵士を描く。それでも戦争という環境が十分にドラマを生み出す。それぐらい、戦争というのは今の時代に生きる人間からすれば非日常なのだ。そしてそのすべてが悲劇である。ノーラン監督のこの視点は斬新だと感じた。
全体を通してすさまじい緊張感が続く。BGMの随所に入るチクタク音が映像や脚本を盛り上げる。
もう一つ、この映画では敵であるドイツ兵がほぼ姿をみせない。これが緊張感や恐怖感をさらにあおる。敵の動きが全く見えない。敵の考えが全くわからない。戦局の不利な状況でこの状態は怖い。未知への恐怖がここにある。
ももこの21世紀日記 No. 1 さくらももこ
- 作者: さくらももこ
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2005/04
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さくらももこの絵日記。かわいらしいイラストともにクスッと笑えるエピソードが盛りだくさん。1日1ページなので読みやすい。布団の中でポツポツ読んだ。なんとなく、良い夢が観れたような気がする。
贈る物語 Terror 宮部みゆき編
贈る物語 Terror みんな怖い話が大好き (光文社文庫)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2006/12/07
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心の外にあるものを欲しがると、怖い目にあうよ。(巻頭文)
古今東西のホラー小説を集めたアンソロジー。
編者、宮部みゆきがそれぞれの物語を紹介してくれる。短編映画を連続で、解説付きで観ているような楽しさがある。読書が苦手でも、宮部みゆきの口車(?)に乗せられて、ついつい読みたくなってしまう。
収録されているお話はじわじわとくる恐怖系のものが多い。この辺りは編者が女性だからだろうか。恐怖はその正体がわからないからこそ恐怖であるともいえる。恐怖の小体を模索して、アレコレと考えてみるのも楽しみ方の一つだろう。
個人的にはフィリップ・K・ディックの「変種第二号」が気にいった。SFとホラーとミステリを絶妙に配合した感じが良い。長めの話だがテンポが良く、ストーリーに引き込まれる。映画にしたらおもしろいと思うのだが、誰か作ってくれないだろうか。
もう一つ、デイヴィッド・マレルの「オレンジは苦悩、ブルーは狂気」もおもしろい。狂気の画家ファン・ドールン(明らかにファン・ゴッホがモデルである)の絵画を研究したものは、みんなドールンと同じく狂っていく。友の死を契機に、主人公もドールンの絵に魅せられていく。果たしてドールンの絵んい潜むものとは・・・。
どちらも最後には謎が解け、恐怖の正体がおおむね明らかになるものだった。ミステリ好きとしては、やはり投げっぱなしよりは解答を示してくれたほうがスッキリするのだ。ホラー小説の読み方ではないのだが。
告白 渚かなえ
<i>ねえ、渡辺くん。これが本当の復習であり、あなたの更生の第一歩だとは思いませんか?(森口)</i>
我が子を亡くした中学校の女性教諭、森口は最後のホームルームで驚愕の告白をする。我が子を殺した犯人がこの教室にいるのだと。
語り手を変えながら全編モノローグで構成される共学のストーリー。最初はタイトルどおりそれぞれの『告白』だと思って読み進めていたが、後半になるにつれ少し違うと感じた。登場人物はみな自分が正しいと思っているというか、後悔していないわけではないが、自分を美化している感じがする。
告白と見せかけて、そこには虚実が入り混じり、全体を複雑にしている。それが著者の狙いであり、物語の厚みを作っているのだと思う。
誰しも主観というバイアスから逃れることは出来ない。それぞれの思い込みが、美化が、世の中を複雑にしていく。この作品はままならない世の中の縮図であるように感じた。