続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

虫眼とアニ眼 養老孟司 宮崎駿

虫眼とアニ眼 (新潮文庫)

虫眼とアニ眼 (新潮文庫)

必要なのは、理念を語ることではなくて実際に何かをやることです(宮崎駿)

ジブリの監督・宮崎駿と脳解剖学者・養老孟司の対談集。

とんがった2人が現代という時代を語る。といっても少し古い、もののけ姫千と千尋のころのお話。しかし、この頃から2人が抱くどうしようもない危機感のようなものは、今持って膨らみ続けているように思う。特に子供たち、その育つ環境についての不安が大きい。

今の子供たちはとてもバーチャルな世界に生きている。そして、実物よりもまずバーチャルに触れることが多い。これは実物に触れて、その後バーチャルに触れた大人たちとは全く異なる経験だ。宮崎監督は、これを「皮膚感覚がない(乏しい)」と表現した。なるほど、と思った。

僕も含む若い世代は情報にばかり触れている。一方で実物に触れることは少なくなっている。Wikipediaタガメを見たことはあっても、田んぼでタガメを捕まえたことは無い。そんな人間が多い。だから知識という情報はあっても、その基礎にある現実が抜け落ちているのではないだろうか。それはとても怖いことなのかもしれない。

養老先生は「デジタル化されたデータを拡大しても紙のスジが見えるが、実際の生物を拡大すると細胞が見える」という。そのことを時代はどんどん忘れつつあるのかもしれない。