続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

人造人間キカイダー The Novel 松岡圭祐

「人は単純かもしれない。それが生命か物体かなんて吟味する前に、ただ人の姿かたちをしているだけで、愛情を持ってしまうんだよ」(服部)

何年か前にキカイダーのリメイク映画が作られた。本作はそのノベライズである。

世界有数のロボット会社ダークは、裏で戦闘ロボットを作り軍事産業推し進めていた。ロボット工学の天才、光明寺博士は家族を人質にとられ仕方なくダークの望むロボットを作る。しかし彼は秘めた計画により、キカイダー/ジローを作り出す。そして、キカイダー/ジローとダークの因縁の戦い幕を開ける。

キカイダーは世代ではないのだけれど、なんとなく好きだった。赤と青の左右非対称なデザイン。透明な頭部。こんなにエキセントリックなのに、何故か全体として調和がとれてかっこいい。石ノ森章太郎おそるべし、と思ったものである。原作漫画もずいぶん昔に読んだ。ピノキオをベースにしつつ深すぎるテーマと、驚愕のラストで度肝を抜かれた。

さて、本作では原作の基本設定は守りつつ、まったく新しいキカイダーが描かれる。

とくに著者は、キカイダーのデザインの意味を解釈することにこだわったようだ。何故、体のデザインが左右半分で違うのか。なぜ頭が透けているのか。黄色い筋はなんなのか。ストーリーに絡めて、なるほどよくできている。

また、ロボットの生命とはなにかというテーマもよい。ロボットは死んだ(壊れた)ら消えさるのみ。明確になにも残らない。だからこそロボットは人間以上に死を恐れる、という解釈はおもしろい。ロボットものはついつい「死をも恐れぬ無敵の軍団」になりがちなところを、うまくコントロールしている。

ストーリーの大筋やバトルシーンは特にひねりはない。退屈なくらいだが、逆にキカイダーをはじめとするヒーローものの王道を描いているともいえるだろう。

石ノ森翔太郎の漫画が印象に強いので「やっぱり原作が…」と思ってしまうが、本作も悪くはない。奇をてらったりしない、いいノベライズだ。