続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ 川上和人

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。

タイトルからしてぶっちゃけまくりな鳥類学者が書く本。実際の研究のあれこれから、普段の生活で思いついたくだらないネタまで好き放題書いてある。

こうかくとふざけた本のようだが、著者の幅広い知識とウィットに富む文章で、楽しく気軽に研究の世界に触れることができる。居酒屋で話でも聞いているような不思議と楽しい感覚になる。読書は人との出会いである、という人がいるがこの本はまさにそういう本だろう。

楽しく本を読み終えると、鳥類学や研究の世界になんだか興味が湧いてくる。なんだか著者にうまくやられてしまった。

犬 中勘助

犬―他一篇 (岩波文庫)

犬―他一篇 (岩波文庫)

「水臭いではないかえ。わしがこれほど思うておるのにそなたは少しも報いてはくれぬ」(僧)

苦行を続ける僧はある日近所の娘に惚れてしまう。彼女を手に入れるため、彼は呪術で自身と娘の体を犬に変えてしまう。かくして畜生の肉欲に溺れる生活が始まるのであった。

人間の欲の愚かさを描く作品。直接的ではないにしてもなかなかグロいシーンが続く。恋愛の狂気とでもいうところを強調して紡がれるストーリーはホラー作品といっても過言ではない。

僧の愚かさは肉欲に溺れたことだけではない。上に引用したように、愛情に見返りを求めたことにある。愛情はgive and takeではない。give and giveである。結果としては同じかもしれないが、過程が違う。愛したから愛されて当然などとは勘違いも甚だしい。

愚かなのは僧だけではない。最青年軍師は武力と酒の力で無理やり娘を犯す。力に呑まれた人間を象徴している。一方で、娘はそんな青年に会いたいと願う。子供を宿したが故の本能か、あるいは妄念か。見ず知らずの男、しかも自分を凌辱した男に心とらわれる。一見、被害者のように見えて其の実一番の狂気に呑まれているのは彼女ではあるまいか。

人間だって畜生である。その上に理性の衣を纏っているだけに過ぎない。ただ、その衣こそが人間を人間たらしめている。救いようの無いラストも当然なのだろう。本作の登場人物は、早い段階で理性の衣を脱ぎ捨てているのだから。

生命とは何か 物理的にみた生細胞 シューレディンガー著 岡小天、鎮目恭夫訳

 

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

生命とは何か―物理的にみた生細胞 (岩波文庫)

 

 1944年に発刊された物理学者の目線で生命の本質を探ろうとする一冊。まだ、遺伝子がタンパク質であると考えられていた時代を考えると、シューレディンガーの考察の鋭さに驚かされる。ちなみに同年、オズワルド・アベリーらが遺伝子の本質がDNAであることを論文として発表した。

 

古い本であるうえ翻訳本なので読むのに苦労した。読んではみたが今一つ理解できないことも多々ある。ぼくの読解力不足をはっきり感じつつも、それでも物理学者の眼からみえる「生物という系」の新鮮さに触れることができたように思う。

 

たとえば、著者は「なぜ生物は(原子と比べて)こんなに大きくなくてはいけないのだろうか?」と考える。個々の原子は無秩序に振る舞う。しかし、集団として統計学的に見れば、おおむね秩序だった振る舞いを見せる。生物の秩序のためにはある程度の原子集団が必要であると考えたのだ。こんな考え方は生物学者にはきっと出来ないだろう。目線が、立ち位置が全くちがう。

 

「考察する」ということを見せつけられたような、そんな気がした。 

 

聖書物語 木崎さと子

聖書物語 (角川ソフィア文庫)

聖書物語 (角川ソフィア文庫)

聖書をコンパクトな物語にまとめた一冊。
旧約聖書新約聖書をガッツリ読むのは大変だが、これを読めばなんとなく聖書で語られる印象的なシーンを知ることができる。

とはいえ宗教にあまり興味がなく、基礎知識の乏しいぼくにはどうにも読み辛く、眠い一冊であった。なんだかんだで読み切るのに半年もかかったので、たぶん向いていないのだろう。

メアリと魔女の花 米林宏昌

『私…今晩だけは魔女なんだ!』(メアリ)

スタジオジブリが育て上げた米林監督がついにスタジオを独立し、映画を作り上げた。

全体的にジブリリスペクトに溢れる映画で、ほうきで空を飛ぶシーンは魔女の宅急便、魔法大学のマダムとドクターは湯婆婆と釜じい、魔法はハウル、液体状の敵はポニョの波、ラスボスはカオナシといった具合にオマージュに溢れている。

エンドクレジットの最後には『感謝』としてジブリの3大重要人物の名前がクレジットされている。なんだかそれをみて感動してしまった。米林監督が、自分の培ってきたものをしっかり師匠に見せつけた。これはそういう映画なのだろう。

内容もしっかり子供向けのドキドキワクワクする映画に仕上がっている。アリエッティのときにはあまりはっきりしなかった物語の波もあって、作品に引き込まれる。

細かいことが少し気になったが、これは2度3度みる中変わって行くかもしれない。かつてのジブリ映画もそういう作りになっていたのだから。

肉体の門 五社英雄

毒のある映画が見たいと思ってAmazon prime Videoで視聴。

戦後。廃ビルを寝ぐらとするパンパングループがあった。リーダー格は関東小政の異名を持つせん。彼女らは独自のルールをもち、廃ビルに落ちてきた不発弾を御神体とあがめ、やくざな世の中を渡って行く。

生命力溢れる過激な描写をで、物語は悲しさを増していく。今の時代にこんな映画はもう作れないんだろうなあ。

ビートたけしの黙示録 ビートたけし

 

ビートたけしの黙示録 (徳間文庫)

ビートたけしの黙示録 (徳間文庫)

 

 人間なんで生まれて、なんの目的で生きてきゃなかならないかってじっと考えると、自分ていうのは何にもないってとこに突き当たる(著者)

 

 2000年頃に出版されたビートたけしが書きたい放題の一冊。社会情勢を中心に、著者なりの解釈が書き綴られる。

 今読むと、先見の明を感じる話も有るし、バカらしい話もある。まあ大体この手の本はそんなもんだろう。

 個人的に感銘を受けたのは「人生はサウナ」理論である。人生は苦しみに溢れている。死だけがその開放である。あともうちょっと、とサウナの中で耐えるとき想像するのは風呂上がりのビールなのだ。これだけ大成功を収めたビートたけしでも、そんな人生観をもっている。いわんや凡人をや、というところだろうか。