続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

カエルの楽園 百田尚樹

カエルの楽園

カエルの楽園

「大丈夫よ。ひどいことにはならないわ。だってナパージュには三戒があるんですもの」(ローラ)

百田尚樹が寓話で描く日本の安全保障問題。ちょっと露骨すぎる感じはするけれど、著者はこれぐらいにしないと今の日本人には響かないと考えているのだろう。

思えば「国が滅びるかもしれない」という危機感は、僕たち日本人には乏しい。海に阻まれ他国が攻め込みにくいこともあり、内側に意識が向かいがちなのだろう。あまり国と国と関係や、国際社会における自国の位置付けに意識が向かわない国民性なのだ。

人間は理性の皮を被っているが、その中身は獣である。手に入るものは欲しくなってしまうものだ。もし、他の国が日本を手に入れられる状況になれば、日本は奪われてしまうだろう。国や文化や歴史は、守らなければ失われてしまうものなのだ。

陰陽師 夜光杯ノ巻  夢枕 獏

 

陰陽師―夜光杯ノ巻 (文春文庫)

陰陽師―夜光杯ノ巻 (文春文庫)

 

 「おまえの笛を聴かせてくれぬか」(安倍晴明

 

安倍晴明が平安の闇をほとりほとりと歩む。その静かな暗闇は恐ろしくもあり、おもしろくもある。

 

シリーズの空気をしっかり保った安定感のある一冊。平安の夜の闇を感じたい人はどうぞ。

日日是好日 大森立嗣

「まずは形をつくるの。そこに心が入るのよ」(武田先生)

1997年。大学生のノリコは、ひょんなことから近所の武田のおばちゃんのもとへお茶を習いに行くことになる。武田のおばちゃん改め武田先生のもとへ毎週土曜日はお稽古に。最初はいやいやながらの習い事だったが、次第にノリコの生活からお茶は切り離せないもになっていくのであった。


あんまり邦画はみないのだが、映画館で予告をみて「これは観とこう」となった作品。禅宗に由来するタイトルもいいし、お茶にもへうげものの影響で少し興味がある。なにより樹木希林演じる武田先生が良さそうだったのだ。

これは「現代の茶道」の映画である。平成の世の中に茶道を学んで何の得があるのか。なんの意味があるのか。その答えのいくつかがこの映画の中にあると思う。

1つは静けさを得ることだろう。週に一度のお稽古は茶道の型を学ぶ時間であり、決まった所作を繰り返し研磨する時間である。日々雑然と生きる平成の人間にはこのような安定感のある時間は滅多にないだろう。貴重な時間である。もちろん稽古中であるから、自分の所作に集中する。この静けさこそが重要である。

感じ入るためには、己を安定した状態に置かねばならない。自分がフラフラしていては、見えるものも見えない。劇中、ノリコはお湯と水の発する音の違いを感じ、雨音の違いを感じていた。心穏やかに静けさを会得したからこそであろう。

作中では時代が大きく変化していく。2000年前後はいろんなことが変わった時代だった。携帯電話、パソコン、インターネットの普及など、世の中を大きく変えるものが続いた。時代に振り回されず、自分の目線を保つため、茶道は大きな役割があるといえる。

これに呼応するように、ノリコを含む大くの登場人物は時間とともに変わっていく。しかし、武田先生は変わらない。ずっとおばあちゃんである。武田先生の不変がノリコを際立たせるのである。とかく時代の流れが早くなり、それに合わせた変化が賞賛される世の中、見直すことがあるのではないだろうか。

バーフバリ 王の凱旋 SS ラージャマウリ

インド国家を挙げた一大プロジェクト第2作。これがドッカンきたときに、ぼくはその存在を知って、ひとまず一作目をレンタル観た。本作は近場で見れなかったんで、やっとこれまたレンタルで観たのだ。

この映画、一言で言うならばアジア映画とハリウッド映画のいいとこ取りである。ハリウッドさながらのド派手なアクション、日本映画の如き骨肉の争い、東南アジア独特の豊かな色彩、中国映画ばりのワイヤーアクション。そして、神話さながらの理屈抜きに納得と行くストーリー(これが1番凄いと思う)。これらを実に見事に一つの作品としてまとめた感時に努力と才能には頭が下がるとしかいいようがない。

そしてたぶんこれが、未来に映画の1つの形なのだ。ハリウッドはテクニックは凄まじいが、繊細なストーリーは苦手だ。日本映画はストーリーの妙はあるものの、テクニックが追いつかない。世界各地で一長一短であった映画が、インドでついに集結した。これからの「金のかかった映画」はこうなっていくにだろう。もちろん、予算が大きければいい映画ではない。それでも金の力は大きなものを生み出す。なぜなら、現代地球の多くの国は資本主義を採用しているにだから。

ボロボロになった人へ Lily Franky

 

ボロボロになった人へ (幻冬舎文庫)

ボロボロになった人へ (幻冬舎文庫)

 

 

人生は浮き沈みの連続である。そんな人生の一場面、沈んでしまった、あるいは沈みつつある人々を描く短編集。

 

人間は光り輝くだけのものではない。すべてを吸い込んで真っ暗に堕ちていくこともある。そんなことを思い出させてくれる一冊。人生は浮き沈みだ。沈みも含めて人生なのだ。

山本耳かき店 安倍夜郎

 

山本耳かき店 (ビッグコミックススペシャル)

山本耳かき店 (ビッグコミックススペシャル)

 

 「ふぅ」(耳かきの仕上げ)

 

なんともニッチな着眼点で描かれる安倍夜郎先生のデビュー作。深夜食堂が大当たりする前にこの作品ははじまったようだが、以来不定期でコツコツ連載されてきたようだ。

 

人生の様々なときに耳かき店を訪れる人々は、その官能的なやすらぎに心動かされる。あるものは恋愛に目覚め、あるものは安らぎを覚え、あるものは悩みから一歩」足を踏み出す。

 

耳の中に棒を突っ込むという行為は意外と危険である。そう思うと、仕事とはいえ見ず知らずの他人に耳かきをしてもらうというのはなかなか勇気のいる好意だ。そして耳かきをしてもらうというのは相手に自分の身をあずけることとも言える。そういった状況はギスギスしがちな現代社会ではまず無い。そういう特殊な行為が人の心にお大きな影響を与えることはあってもおかしくないと思う。

 

セリフ少なく、ゆったりと流れる独特の空気のは心地よい。深海に潜って物語を楽しむような、そんな不思議な漫画である。

バッドボーイズ2バッド マイケル・ベイ

いまやトランスフォーマーシリーズでおなじみのマイケル・ベイ監督の出世作シリーズ2作目。マイアミ警察のはちゃめちゃコンビが、今日も豪快に(結果として力尽くで)事件を解決する。

豪快なストーリーと派手なアクションでスカッと気分爽快に観れる映画。キレッキレのウィルスミスが爽快感を盛り上げる。ほどよいコメディ要素もあって家族みんなで楽しめる映画に仕上がっている。ちょっとグロいシーンが多いので、お子ちゃまには見せられないけれど。

ド派手なアクションシーンはトランスフォーマーシリーズに通づるところも多い。比べてみると映像の進化を感じられるにではないだろうか。