続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

山本耳かき店 安倍夜郎

 

山本耳かき店 (ビッグコミックススペシャル)

山本耳かき店 (ビッグコミックススペシャル)

 

 「ふぅ」(耳かきの仕上げ)

 

なんともニッチな着眼点で描かれる安倍夜郎先生のデビュー作。深夜食堂が大当たりする前にこの作品ははじまったようだが、以来不定期でコツコツ連載されてきたようだ。

 

人生の様々なときに耳かき店を訪れる人々は、その官能的なやすらぎに心動かされる。あるものは恋愛に目覚め、あるものは安らぎを覚え、あるものは悩みから一歩」足を踏み出す。

 

耳の中に棒を突っ込むという行為は意外と危険である。そう思うと、仕事とはいえ見ず知らずの他人に耳かきをしてもらうというのはなかなか勇気のいる好意だ。そして耳かきをしてもらうというのは相手に自分の身をあずけることとも言える。そういった状況はギスギスしがちな現代社会ではまず無い。そういう特殊な行為が人の心にお大きな影響を与えることはあってもおかしくないと思う。

 

セリフ少なく、ゆったりと流れる独特の空気のは心地よい。深海に潜って物語を楽しむような、そんな不思議な漫画である。