続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

遠野物語remix 柳田國男×京極夏彦


そう思い定めた途端、見慣れた妻の顔は化け物にしか見えなくなった。

正直、柳田國男のことはよく知らない。なんせ古い時代の人だし、本業は物書きではない。しかし、日本の文学の歴史に大きな足跡を残す存在なのはそこかしこで感じられる。

本書は柳田國男の妖怪説話集である『遠野物語』を京極夏彦が現代人に読みやすくアレンジしたものである。個人的に、現時点で京極夏彦最大の仕事ではないかと思う。昔、原作にチャレンジしたことはあるが、こちらは仮名遣いが古すぎて読み切れなかった。本書なら、読める。


妖怪物語として、また民俗学的な資料として遠野物語の価値は大きい。また地名に関する柳田の考察も面白い。事実だけを淡々と述べ、想像の余地が大きい。怪談向きの文章である。現在より夜の闇が深かった時代。果たしてその闇にうごめくものはなんだったのか。そして、その闇は現代にもまだ残っているのだろうか。