続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

遠巷説百物語 京極夏彦

 

 

 昔、あったずもな。

 

 巷説百物語シリーズ第6弾。舞台は東北盛岡領遠野。浪人、宇夫方詳五郎は秘密裏に遠野を治める盛岡藩筆頭家老・南部善晋の命を受け、庶民の巷に広がる噂とその実態を調べていた。しかし、いつしか、巷の噂の裏に怪しい影が蠢き始める。

 

 ぼくはこのシリーズが非常に好きで、まさかのシリーズ続行に感謝感激というところ。基本はいままでどおり、あちらを立てればこちらが立たず、どうにもならないこの世の中を裏の渡世のもの達が妖怪を使って収める物語。人の心の暗闇を巧みに捌く無法者たちの活躍に心が躍る。

 

  舞台を大きく変えつつも、おなじみのキャラクターたちは顕在。今までなかったキャラクター同士のコラボも楽しみだ。また、本作では遠野を治める盛岡藩が物語にぐいぐいと食い込んでくる。過去の物語では庶民の間の、個人的な問題が妖怪の対象であったが、本作はすべての背景に悪化した盛岡藩の政治体制がある。当然、妖怪の牙は盛岡藩にも向くわけで、体制への反逆としてのロックな一面もある。

 

 これまで以上に痛快な妖怪の噺。これ単独でも楽しめるので、ぜひ皆さんにおすすめしたい。