続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

12人の死にたい子どもたち 堤幸彦

映画「十二人の死にたい子どもたち」オリジナル・サウンドトラック

映画「十二人の死にたい子どもたち」オリジナル・サウンドトラック

うーん。微妙なところ。68点ぐらいの映画、というとこだろうか。豪華キャストで演技は素晴らしいと思う。ピリピリした緊張感がよく出ている。一方、脚本的には苦しいか。いや、仕方がないと思うけれど。

なんせ主要人物は12人もいるのだ。120分の映画のサイズだと単純計算で1人にかけれる時間は10分である。無茶だ。堤幸彦監督は大人数でのドタバタ劇を描くのに長けているが、本作は「自殺のために廃病院に集まった12人」を描くのである。ドタバタ劇のノリにするわけにはいかないだろう。設定も事件もアイデアは実に面白いが、なにせ映画のサイズに向いていなかった。監督と脚本家の苦労が眼に浮かぶようである。

主要人物がせめて半分の6人いないであったなら、もう少し個人個人を掘り下げることができたかもしれない。この掘り下げが無いので、この映画は「比較的シンプルなミステリ」に留まってしまっている。サクサク解答にたどり着けるミステリは、ある意味現代っぽいのかもしれないが、やはり面白みに欠けると言わざるを得ない。サクサク過ぎて意外性もあまりない。掘り下げがあれば、複雑な事件の背景にある複雑な人間性を描くことができ、全体の重みが増すのである。

というわけで原作を読むか、映画を観るかで迷っている人には、是非原作を読んでほしい。この映画的に無理のある設定でも強引に映画化に持っていった人がいるからこの映画は成立している。原作にはそれだけのパワーがあると見ていいだろう。といってもぼくは原作未読なので全くあてにならない意見だが。