「この天地すらも、往くものじゃ」(天帝)
陰陽師シリーズ第・・・何作目だ。もうわからなくなってきた。もはや夢枕獏のライフワークとも言えるシリーズ。あとがきをみるともう25年も続いている。いや、この先のシリーズもあるから、すでに30年は経っているのだろうか。
ライフワークとなっていることもあり、作者の人生のあれこれが如実に反映される作品である。本作のあとがきには、作者は自分が「秋」にあると述べている。若い始まりの春にはじまり、血気盛んな夏を過ぎ、落ち着きと豊穣の秋に書かれた陰陽師。平安の夜の闇を、より詩的に描いていく。
本作には李白の漢詩がよく出てくるのが特徴的であった。平安の暗い闇を思いながら読む漢詩はまた趣があって良い。心地よい読後感が残る。