続: ぼくの一時保存

主に読書ブログ。たまに頭からはみ出したものをメモ。

とにかく散歩いたしましょう 小川洋子

とにかく散歩いたしましょう

とにかく散歩いたしましょう


『犬とはつまり、機嫌のいい生き物である』(著者)

小川洋子さんは物語の人である。このエッセイからもそれを強く感じた。

著者は多くの物語を読み、深く感じ入っている。エッセイの端々にそれらの物語が引用される。

同時に磨き抜かれた観察眼で、著者は自分の人生や身の回りのあれこれにも物語を見出していく。淡々と、気持ちよく描かれる物語は実に優しい。現実のトゲをオブラートに包み込む。

生きるには物語が必要だ。あまりにも現実は苦いから、オブラートなしでは飲み込めない。優しい優しい一冊であった。